人間の目はよくカメラに例えられますが、従来のフィルムカメラより現在のデジタルカメラ(デ ジカメ)にさらによく似ていると言えます。デジカメの画素数は1000万を超えましたが、人間の目の網膜の画素(視細胞)数は1億から1億3000万と言 われています。視細胞が受けた光の情報は、網膜内でも処理が行なわれ、約100万の視神経線維に集約されて脳の視覚中枢(コンピューター)に画像信号が伝 達されます。動脈が閉塞して視細胞や視神経を栄養する血流が絶たれることは、デジカメの電池が突然切れた状態と同じことになります。自覚的には急に目の前 が真っ暗になったり、部分的に見えなくなります。この様に目の網膜を養う動脈が閉塞する病気を「網膜動脈閉塞症」と言います。網膜全体を支配する元の部位で閉塞した場合を網膜中心動脈閉塞症と言い、枝の一部が閉塞した場合を網膜動脈分枝閉塞症と言います。両者の比率は半々と言われます。

網膜動脈が閉塞した直後の眼底は、血液が流れなくなった部位の網膜が浮腫を起し、白っぽい色になります。(図1)

 

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網膜の視細胞が血流が途絶えた状態に耐えられる時間は、せいぜい1時間から1時間半と言われます。この時間内に血流を回復することが出来なければ、その後の治療である程度回復し浮腫が吸収しても、視力が戻ることはありません。(図2)

 

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突然片側の目の視野の全体か一部分が、暗くなり見えなくなった時は、一刻も早く眼科を救急で 受診し治療を受ける必要があります。発作直後の治療としては脳梗塞や狭心症の発作時に似て、血栓溶解剤の点滴や血管拡張剤の投与が行われることもあります が効果が不確実で一般的ではありません。通常行われる治療手段は、眼球マッサージや眼圧を下降させるために眼球内から水を少し抜く前房穿刺などです。ある 程度経過してからは再発予防目的でアスピリンの内服が処方されます。

網膜動脈閉塞症の主な原因としては
以下のようなものがあります。

  1. 網膜動脈そのものに動脈硬化症が進行し、動脈の内腔が狭くなり血栓が形成される場合
  2. 血液が心臓から網膜に来るまでの血管に動脈硬化症が起り、その血管内壁から剥がれた血液や脂肪の固まり(栓子)が流れてきて、細い網膜動脈に詰まった場合
  3. 動脈の炎症や経口避妊薬ピルによる副作用によるもの


以上のように、この病気の発症には全身の動脈硬化症が大きく関係しています。高血圧症高脂血症糖尿病等は全て動脈硬化症を引き起します。

網膜動脈閉塞症の大きな発作を起す前に、前兆として時々ほんの数秒間目の前が真っ暗に感じる一過性黒内症を経験することがあります。発症すると高率に不可逆性の視力低下が起ってしまう網膜動脈閉塞症を予防するためには、前記した全身の動脈硬化症を引き起す基礎疾患の治療に 真剣に取り組むと同時に、一過性黒内症の経験のある方は、もし発症が疑われた時の対策を、眼科の医師とよく相談しておく必要があります。日頃の生活習慣と しては、不眠を繰り返したりストレスをためたりしないようしにし、出来たら禁煙を実行しましょう。食生活では塩分を制限し適度に水分摂取することも大切で す。

内科受診や健診で血液検査を行なった時は、その結果票を眼科の医師に普段から見てもらうようにしましょう。